2023.12.26 UPDATE


第50次寿越冬闘争 基調提起文

 

 2023年も暮れようとしている。今年お亡くなりになった方たちの顔を思い浮かべて一人一人の命のあゆみを感じながら、この越冬に取り組みたいと思う。

 社会は一人一人の命を大切にする方向から逆に向かう力が大きくなってしまっているような気がする。その最大のものは戦争だ。2022年はロシアによるウクライナ侵攻、2023年はイスラエルによるガザ侵攻が起こっている。人を殺せば犯罪だが、国家が人を殺せば犯罪ではなく戦争と言い換えられる。そして戦争は「自衛戦争」「対テロ戦争」と修飾されて正当化される。しかし戦争=殺人であり犯罪だ。やっていい戦争=殺人など決して無い。私たちは先の戦争においてアジアで2000万人を殺し、日本でも310万人が殺されるまで、戦争を止めることができなかった。この悲惨な経験から学んで決して戦争はしないと誓う日本国憲法を獲得した。人類の英知である憲法を持つ私たちは、いかなる戦争にも反対して、世界が戦争に向かうときにそれを止める役割を担っていると思う。

 戦争以外でも差別を煽り排除していく動きは、一人一人の命を奪ってしまう。100年前の1923年に起きた関東大震災の時には、朝鮮人に対する差別意識を背景にデマに惑わされた人々が多くの朝鮮人・中国人・社会主義者たちを虐殺した。そして野宿生活をしている人を襲撃する事件は現在でも起こっている。1983年、横浜で少年たちに次々に襲撃されて3人が殺害され、13人が重傷を負った。2020年、岐阜で81歳の男性が少年グループに襲われ土の塊をぶつけられて殺され、渋谷区のバス停で64歳の女性が男に石とペットボトルの入った袋で殴られ殺された。また外国籍の人の命も軽んじられている。2021年スリランカ人女性のウィシュマ・サンダマリさんが名古屋の入管施設で食事もできないほど体調が悪化しているのに必要な医療に繋ぐこともされず放置され死なされた。そして外国籍の人の人権をさらに軽視する入管法改悪が2023年に行われた。野宿生活している人や外国にルーツを持つ人を差別して排除しようとする社会と制度が人の命を奪っている。私たちは差別され排除される人の側にたち、不寛容で差別的な社会と制度こそを問うていかなければならない。

 命を守る医療への信頼も揺らいでいる。コロナ感染の拡大時には、病床が逼迫して入院が必要な人も入院できずに「自宅療養」を強いられて亡くなった人がいた。東京の滝山病院では精神科に入院している患者さんへの虐待が報道されて、地域への退院ではなく「死亡退院」が突出して多いことが明らかになった。こうしたことは一人一人の命を守るために医療を提供するという視点ではなく、いかに人手をかけず安上がりにさせようという医療政策によって引き起こされている。見かけの経済性だけで計るべきではない医療が、金勘定で無謀に削られて、命を守られるべき病人が死なされていく。病は誰にでも起こることなので私や隣人たちもいつ死なされることになるか分からない。

 日常生活でも暮らしにくさがひしひしと感じられる。止まるところを知らない物価高が続き食料品や日用品を買うことも控える場面が多くなった。賃金の上昇も間に合わず、年金や生活保護で生活している人や低所得の人は特に生活を厳しくさせている。こうした私たちの生活の苦しさに岸田政治はまったく目もくれようとせず、軍事予算を大幅増額して、アメリカのご機嫌を取るためにアメリカ製中古ミサイルを大量購入しようとしている。そして軍事費を捻出するために増税まで企てている。ミサイルをかじっても食べられない。このままでは近い将来日本で生活に困窮する人から次々と飢え死にしてしまうのではないだろうか。2014年に亡くなられた俳優の菅原文太さんは政治の役割は2つあると言っていた。「国民を飢えさせず安心な食べ物を供給すること」「絶対に戦争をしないこと」これこそが今、政治が実行するべきことだ。

 寿越冬闘争は人の命と暮らしの現場から遠く離れて顧みない岸田政治とは違い、隣にいる人の命と心と暮らしに接している。命を奪い傷つけるあらゆる戦争や暴力と支配に反対する。あたたかい心を持って、自分だけでなく他人の心も尊重して傷つけないようにしていく。差別を行わず、できるだけ寛容な心で接して排除しない。みんなの命をみんなで守っていく。寿越冬からこうした声を発して広げていくことによって、少しづつでもみんなが生きやすい社会になっていくようにこの基調を提起する。

 

第50次寿越冬闘争勝利!

一人の野垂れ死にも出すことなく、最後まで越冬闘争をやり抜こう!