2021.12.26


第48次寿越冬闘争

基 調 提 起 文

 

 2021年は新型コロナウイルスとの闘いだった。なんとか第47次寿越冬は、感染症対策を行いながら、やりきったものの、年末から感染者が増加し、年明けの2021年1月7日には緊急事態宣言が発令された。

この発令によって、今回はネットカフェなどは閉まらなかったが、多くの飲食店が休業になり、人と人が出会うことや繋がることが困難になる事態になった。また、同時に雇用に強い影響が与えられた。飲食業などは9割が非正規雇用といわれ、特に夜間の時間などはほとんど非正規雇用の労働者によって運営されている。飲食店が閉まることによって、仕事がなくなる労働者がたくさんいた。それだけでなく、飲料品を作る工場なども三交代でフル稼働していたラインが日勤ラインだけになり、雇用が奪われるなど非常に厳しい事態になった。

 

 このような状況下で政府はステイホームを提唱し、家族とゆっくり過ごすということを提案した。しかし、少子化・高齢化・貧困化は社会的な課題であり、寿に限らず、家族を持たない単身高齢者がたくさんいることは明らかだ。家族で過ごすということは、単身者は孤立してしまうということだ。また、家族がいたからといって、それほど恵まれた住環境に住んでいるわけではないので、ストレスからDVや虐待が増えたのは周知の事実だ。

テレワークの増加も、新しい働き方と歓迎する人もおり、会社に行かなくても働けるということは、東京一極集中に一石を投じる意味はある。しかし、会社に行くことさえなくなるということは、人間関係を作ることがなくなり、社縁という社会の大きな縁に変化をもたらす。労働者が人ではなく、単なる労務を供給する人になってしまう。肉体労働で働いてきた人たちには、テレワークでは活躍の場がない。

雇用関係の変化が新たな孤立を生む可能性が出てきた。私たちは声を挙げ、しんどい仲間と繋がり、誰をも排除しない社会を実現していかなければならない。

 

 すでに毎週金曜日の炊き出しなどには、40代・50代の稼働年齢の仲間たちが並ぶようになってきている。この仲間たちの多くが、仕事を失い、家を失い、寿にたどり着いたのだろう。今までは何とか仕事にありつけていた仲間の中にも生活破綻をする仲間が出てきているのだ。

まだ、なんとか生活している仲間の状況も深刻だ。リーマンショック後のように、派遣切りで野宿生活者がたくさん生み出されるというような状況にはなっていないが、住居確保給付金や緊急小口資金・総合支援資金などの給付や貸し付けで何とかしのいでいるのが現状だ。この制度はもちろん期限付きのものだが、景気が回復しないために、延長延長で対応してきている。貸し付けの総額はすでに1兆6千億円にもなり、公的な借金によって生活を回している仲間もたくさんいる状況だ。

景気が回復せず、貸し付けがなくなれば、生活が破綻する仲間たちが出てくる。コロナのせいにしているが、オリンピックリバウンドで日本経済はかなり深刻な状況だ。野宿に困る仲間たちと繋がり、当たり前の生きる権利を主張していきたい。

 

 今年はオリンピックを巡る闘いもあった。多くの野宿生活者が生活する横浜スタジアムがオリンピックの開催地となり、移動を求められた。越冬実としても横浜市と交渉を持ち、排除にならないためにも代替地を要求した。結果、簡易宿泊所を活用して対応することになった。また、当初は食事の用意も検討されていなかったが、食事の支給もさせることができた。野宿場所同様に、隣に寝ている仲間と一緒に簡宿に移ることができたので、一部設備が不十分な簡宿があったことを除けば、多くの仲間には好評だった。

 国策として、それまでの生活を変更させるのであれば、生活保障をするのは当たり前のことだ。野宿場所というのは単なる寝場所ではない。そばに寝ている野宿者同士の人間関係もあれば、仕事を紹介してくれたり、野宿場所に食べ物などを運んでくれる地域住民との人間関係もある。今の場所にいるからこそ、生活が回っているのだ。野宿場所を変えることは、重大な危機を呼ぶ可能性があることを強く伝えておきたい。

 

 このような中で、「ホームレスの命はどうでもいい」「生活保護の人の命は軽い」と自称メンタリストが発言した。オリンピックを強行するために、海外からも多くの大会関係者を呼び、新型コロナウイルス感染症者を激増させた。このような状況の中で、経済的に困窮している人の命が軽く扱われるというのは、全く許されないことだ。この事には厳重な抗議をしたい。

 

 社会は年末に向かっている。寿に住んでいた仲間で、今は県外にいる仲間から、越冬には参加したいので、スケジュールを教えてほしいという声が届いた。年末年始ほど社会的排除リスクの高まる時期はない。野宿の仲間、住居不安定者の仲間、寿の仲間を繋いで越冬をやりぬき、誰ひとり孤立させない闘いを行っていきたい。

 

第48次寿越冬闘争 勝利。

一人の野垂れ死にも許さず、最後までやり抜いていこう。

 

以上を、第48次寿越冬闘争の基調として、提起する。