2022.12.22 UpDate


第49次寿越冬闘争 基調提起文(案)

 

 新型コロナウィルス感染症の蔓延から3年間、国内だけで5万人を超える命が失われた。私たちはこの尊い命から学び、自分や親しい人にも起こることだと思って考えて行動しなければならない。重症になってもベッドに空きがなくて入院することもできずに「自宅療養」を強いられて亡くなった人がいる。具合が悪くて救急車を呼んだけれども救急車の中で何時間も待機しなければならなかった人もいる。今まで感じていた医療や救急体制への信頼が揺らぎ、救える命も救えない状況は大きな不安を感じさせられた。

 

 そしてコロナは人の命を奪い健康を損ねるだけでなく、社会に生きづらさを広げてしまっている。経済活動の停滞を理由に、企業は人件費カットのためにまず非正規雇用労働者・派遣労働者から切り捨てていった。収入を絶たれて、家賃の支払いにも困ってどこに相談したらいいのかわからないという人も多くいた。そうしてやっと生活保護の窓口までたどりつくと、集団生活の無料低額宿泊施設への入所を半ば義務付けられたり、疎遠になっている家族に連絡を入れると言われたりして、それをされるぐらいならと、あきらめてしまう人もいた。アパートやホテルなど個室の空きはたくさんあるし、その人本人の生存のために生活保護が今必要なのだから、家族への連絡を入れる必要はないのではないだろうか。

 

 定額給付金の支給に助かった人も多いが、最も必要としている野宿生活をしている人、仮放免中の外国人労働者など、住民登録できない人たちが支給から排除されてしまった。コロナ災害に対する経済対策という本来の目的から考えれば、住民登録などしなくてもいいはずではないか。

 

 生活に困窮する人々に対して姑息な手段で、いろいろな制限をかけてくる一方で、政府は東京オリンピック・パラリンピックに巨額な金をつぎ込み強行開催を進めた。その結果としてコロナの感染爆発を招き、医療崩壊を引き起こさせた。さらに会場の周辺で野宿している人たちは生活の場から排除させられた。そのオリ・パラは今では賄賂と大企業スポンサー利権にまみれた汚れた祭典であったことが明るみにでている。そしてコロナ感染が収束しそうになるとすぐに「GoToキャンペーン」などの業界利権政策を打ち出して、感染拡大を招くと引っ込めるチグハグな経済対策ばかりやっていた。政府は「経済対策」というが経済とはなんなのか?誰のための対策なのだろうか?

 

 人の命と生活のための営みこそが経済ではないだろうか。人件費がもったいないからと、保健所や病床を削減してきたからコロナで命を失う人が増えてしまったことは明らかだ。病床の不足や、病人を見守る人手が足りなければそれを手当てして、命が失われないようにすることが本当に必要な経済ではないだろうか。

 

 非正規雇用と派遣労働を増やして、労働者の生活を不安定にしているのは経済対策として大きな誤りだ。雇用が不安定になれば労働者は将来への投資を躊躇して、家庭を築くことにも二の足を踏む。収入が少なければ当然消費に回せるお金も少なくなるので、経済は回らなくなる。さらに短期雇用で企業内教育も疎かになり、必要なスキルが伝承されずに仕事そのものの劣化を招く。雇用の不安定化は目先のコストだけでは測ることのできない大きな経済的な損失を招く。

 

 生活保護を申請する時に、アパートの個室を借りるように援助することは、それほど大変なことではないはずだ。実際空き部屋は余っているし、借り手を待っている貸し主だって多いので有効に空き部屋を活用できる。行政がアパートの部屋をシェルターとして借り上げれば、スムーズに住居の確保ができる。集団生活でプライバシーが守られない施設にわざわざ収容する必要はないはずだ。相談者が望まない扶養照会を押し進めることが、自立につながるとは考えられない。むしろ躊躇なく生活保護を利用することによって、安定した住居を確保して、就労に結びつくようなスキルを得る援助をすることの方が経済対策としても有効なのではないだろうか。

 

 定額給付金は一時的には効果があったが、まずは住民登録要件を撤廃すべきである。そして住民税非課税世帯に限らず、生活に困窮している世帯もあるので、困窮状況を判別するのは困難である。もらえる人もらえない人がでてきてしまうような対策よりも、物価高で日々の暮らしを圧迫している状況を改善するためには、思い切って消費税を無くしてしまう対策こそ必要なのではないか。実際、消費税が導入されてからずっと、貧富の格差が拡大して経済活動も停滞してきた。貧しい人ほど負担が重くなるような消費税をやめれば、経済も上向くだろう。今までの大企業を太らせるだけの経済対策はニセモノで、人の命と暮らしを守るのがホンモノの経済対策だ。

 

 ロシアによるウクライナ侵攻は一刻も早く止めさせなければならない。そのために私たちのやるべきことは、アメリカからトマホークミサイルを購入することでは決してなく、戦争放棄と戦力の不保持を明記した憲法9条を世界に広げていくことだ。戦争しないと表明する国を攻撃する口実は作れない。反対に軍備を拡張していけば、軍拡競争を招き戦争を誘発してしまう。平和憲法を持つ私たちは世界に広がる戦争の火種を消していく役割を果たさなければならない。

 

 大企業や旧統一協会関連団体など自分たちにお金をくれたり応援してくれたりする団体の言うことは聞くけど、働く人、生活する人の声は聞かないような政治を続けてきたツケを今、私たちが支払わされている。私たちは黙ってツケを払ってはならない。大企業・資本家・武器商人・利権政治に支払ってもらう。

 

 大企業が溜めに溜め込んだ内部留保を吐き出させ、アメリカ製の高額武器の購入をボイコットし、賄賂をもらう利権政治家は牢屋に入ってもらう。

 

 今回の越冬でもコロナ感染防止対策を呼びかけることになる。飛沫が飛ばないようにマスクを着用したり、接触感染防止のために手をこまめにあらったりアルコールで消毒したり、体調が悪いときには活動を休んだりしてほしい。自分自身ももしかしたらかかっているかもしれないと考えて行動することが求められる。そうした行動を他の人にも理解してほしいと思うが、感じ方もそれぞれなのでなかなか難しいかもしれない。感染を警戒するあまりに差別的な対応をしてしまう可能性があることを自分自身の中で気をつけてきたい。今回の越冬は、感染防止対策を取りながら、優しさを持って、みんなの命をみんなで守る活動を行うことが大きなテーマとなる。

 

 寿越冬は路上で、公園で、様々な現場で人とつながり学び合い、炊き出しをして、野宿している人に会いに行き、様々な人から様々な相談を聞き、年越しと新年の行事を楽しむ。そしてみんなが生きていて楽しいと思えるような社会になっていけばいいなと思いながら、ひとりひとりの暮らしに寄り添い命を守る活動をしていくように、この基調を提起する。

 

 第49次寿越冬闘争勝利!一人の野垂れ死にも出すことなく、最後まで越冬闘争をやり抜こう!

 

 以上を第49次寿越冬闘争の基調として提起する。